携帯に残るおばあちゃんからのメールを見ながらのメソメソ週間も終わり、目立つことが好きだったおばあちゃんのため、これからはことあるごとに思い出し、くしゃみの滴が天国から降り注ぐくらいに噂するのが一番の供養ではないかと思い立つ。
おばあちゃんとは今年のお正月に「多様な愛の形を演出する写真館@横浜」に行ったね。
おばあちゃんのコスプレはノリノリでした。
1年前のお正月にはカラオケでKARAを一緒に歌ったね。
おばあちゃんの淡谷のり子調「ミスター」は最高でした。
多くのレズビアンにとって恐怖と思われる親戚との会合。
同年代のイトコやハトコは皆結婚したり、子供がいたり。そして容赦ない「結婚はまだ?」攻撃。
おばあちゃんのお葬式ですら、行く前にはちょっとためらう。
そんな私を見て、MtFの親友が言いました。
「私はきっとおばあちゃんが死んでも、親戚が集まるお葬式には行けないよ。
お別れに行けるのは、うらやましいよ」
小さなことを気にしていた自分が恥ずかしい。
実際、お葬式では叔母さんの1人から「聞いたわよ。大変なことも多いと思うけど、自分が選んだ人なんだから堂々としてればいいのよ、おめでとう!」と突然言われました。
私がカムアウトするのは私の家族までで、それより外の親戚へ言うかどうかは母に任せています。
母からは何も聞いてなかったので驚いたけれど、叔母さんは母が信頼する親戚の1人なのだと思います。
おばあちゃんもあの性格だから、話したらきっと理解してくれたと思うけれど、彼女を紹介するタイミングを失ったことが心残りです。
そうそう、控室でこんなことがありました。葬儀屋さんから
「ちょっと女性の方、来ていただけますか?こっちに給湯室がありますので」
と呼ばれたのです。弟をはじめ、私より年下の(暇そうな)男もたくさんいたのに、給湯係はあくまで女性なのね。
きっとおばあちゃんに聞こえていたら棺桶から飛び起きて
「そこは“女性の方”ではなくて“手の空いてる方”ではないの!?」
って葬儀屋に言ったと思う。そのくらい男女平等の意識がある人でした。
あと、眠るおばあちゃんを見て思ったことは、アイラインのタトゥーを入れていたので、その顔はとても綺麗でした。死に化粧できちんとアイラインを引いてもらえるか不安な人はタトゥーを入れておくと良いと思いますよ。年をとったらメイクも面倒だしね。おばあちゃんは韓国で日本の半額くらいで入れたと言ってたので私も入れましたが、そんなに痛くはなかったですよ。
ただしおばあちゃんの失敗は唇の輪郭に入れた赤いタトゥー。これは何年か経つと黒くなってしまうようで、その上から濃い色の口紅を塗らないとイカ墨を食べた後のようになってしまいます。
唇の輪郭タトゥーには要注意です。
こんな感じで、おばあちゃんの話をちょくちょくしながら思い出し、いつか私も必ずおばあちゃんの元に行くそのときは、ちゃんと彼女を紹介したいと思います。
待っていてください。
形見のピアス