たまに思い出したようにその存在を主張してきたけれど、私はずっと知らないフリをしてきた。
まだ一緒にいたくて?それとも、ただの惰性で?
しかし昨夜、とうとう彼女はキレた。
「私はここにいるのよ!」と、大暴れ。
ああ、もうこれ以上一緒にいることはできない。
今日、正式にお別れしに行きました。
その前に気持ちを落ち着かせるため、癒しの猫カフェへ。
さすがホステス猫だけあって、非モテの私の元にもこんな可愛い子ちゃんが。
いらっしゃい!
お客さん辛そうね。良かったら話してみて?
かりそめのカノジョに癒された私はその足でいよいよ歯医者へ。
お別れにはがっつり1時間以上かかりました。
私から神経ごと引き剥がされた私の親知らずは青白く、どこか寂しそう。
「記念に持ち帰りますか?」
歯医者に言われたので持ち帰り、ドSに「親知らず見る?」と嬉々として聞いたら、断固拒否されました。
ずっと知らないフリしてきたけど、親知らずだって私の一部だったのに。
私は貴女のどこの毛一本でも愛おしいと思うのに、貴女は私の親知らずすら見たくないと言うのね。
なんか腹が立ってきたら、出血が止まりません。
そういえば、スペインでは抜けた歯を枕の下に入れて寝るとネズミがやってきて歯と小銭を交換してくれるという風習があって、子供の頃は歯が抜けるのが楽しみでした。欲しいものがあったら弟に引っ張らせて抜こうとしたこともあったわ。
これはサンタと同じくかなり大きくなるまで信じてました。
ピュアだったあの頃。
こんなことで腹を立てていたらいけないわね・・・。
この親知らずも枕の下に入れておいたら、明日の朝は札束に変わってないかしら。